とある日常 11

車を運転している時、“後ろ側が縦にへこんだ傷のある車”に遭遇することがしばしばある。

おそらく車をバックさせたときに、ポール状のものや建物の角なんかにぶつけてしまった跡なのであろう。

この車の状況を分析してみると、

① ぶつけてしまったばかりでまだ直していない。

② ぶつけてしまったがお金が足りないので直せない。

③ もうオンボロだから直さない。

④ どうせまたぶつけるので直さない。

以上の四択になるかと思われる。

“複数本”傷のある車が前方を走っていた場合、ほぼ間違いなく上記③・④であると推測されるため、その車の持ち主の技量を想像し、車間を十分にとることをお勧めする。

 

さて今回は2本立てでお送りしよう。

 

Part 1

つい最近私は一つ歳をとった。

なかなかもう素直に喜べない年齢でもあるせいなのか、人に祝ってもらうのは気恥ずかしくて逆に申し訳なくなってしまう性格のせいなのか、結局誕生日は例年通り一人で過ごすことを選んだ。

平日ということもあり、いつも通り仕事を終え、勉強会でちょうど一つ余った弁当をもらい受け、自宅へと向かう。

(・・・そうは言っても、今日くらいはちょっと誕生日気分を味わってみたいじゃないか。)

帰り際、いつものコンビニに寄り、普段自宅ではアルコールを飲まない男が缶チューハイを買ってみる。少々気分が高まってきたので、カットされたケーキも購入してみる。(見栄で2個買うところが私の痛い性格ではある。)

自宅へと帰り風呂に入る。白いガウンはないものの、何か特別な雰囲気を出したい気分になる。

(風呂上りに、ベランダで物思いにふけながら缶チューハイでも飲んでみるか。夜空を見上げながら「浸っている自分」にも酔ってみようじゃないの。)

などと、たいしてうまい事を言っていないのに若干上機嫌になってくる。

 

ベランダへ出る。

・・・4階なのに、ものの数秒で手の指を蚊に刺される。

(・・・なぜ指だ。まぁいい。)

指を掻きつつ缶チューハイを開け、一つまた歳をとったことについて、自嘲(じちょう)気味な感じの雰囲気に浸(ひた)ってみる。

・・・数分後、全く酔った感覚にならない。なぜだ。

よくよく缶を見てみると、どうやら“ノンアルコールカクテル”であることが発覚する・・・

(・・・紛らわしいわっ!雰囲気が・・・雰囲気が出ないじゃないか!ちくしょう、弁当にろうそくでも立ててくれるわっ!!)

と、自分の注意不足を棚に上げ、ラオウばりに怒りだすものの、唯一の誕生日プレゼントとなってしまった弁当にろうそくを立てるのも縁起が悪そうなので、気持ちをすぐに落ち着かせる。

よくよく状況を客観視すると、

『①半裸のおじさんが一人②ノンアルコールカクテルを片手に物思いにふけながら③たまに自嘲気味な“にやっ”とした笑みを浮かべつつ④指を無性に掻きまくり、ベランダに立っている。』

というドン引きするような絵が頭に思い浮かび、どこからともなくこの光景を見られてまた不審者と思われるのも勘弁(とある日常1参照)なので、すごすごと部屋に戻ることにする。

 

コンビニのケーキはなかなか美味しいという事がわかった。

『2個買って良かった』と、少しの幸福を感じつつ、その日の眠りについたのであった。

 

 

Part 2

最近、自分に対して非常にショックな出来事があった。

 

私は目が悪い。視力は両目ともに0.1を切り、乱視も両目に加わっている。

普段はコンタクトをしているが、寝不足で目がシパシパしているとき(前日にお酒を多く嗜んだとき等)は、メガネをかけて出勤している。頻度は少ない。

 

さて、その日はメガネをかけていた。

珍しく、職員と業者さんに対してまじめな話をしていたのだが、ふと両目に違和感があった。

「コンタクトがずれたみたいだから、ちょっと待って。」

・・・話を途中で止め、話し相手であるふたりに伝えた。

 

“メガネをかけているのに”である。

 

前日のお酒がまだ残っているせいなのか、はたまた脳みそにウジが湧いているせいなのかはわからないが、皆様にはこの時点においては100歩譲って許してもらいたい。

「目の違和感→コンタクトのせい」と、深く考えず直感で言ってしまった言葉なのだから。よくありそうな勘違いではないか。

 

・・・しかし、次の行動がまずかった…

 

掛けているメガネを自らわざわざ額まで上げ、その後に「コンタクトの調子がさぁ・・・」などと言いながら、目をこすり始めたのである。

 

・・・数秒後に自分でも気づいた。

・・・ふたりはキョトンとしている。

 

そりゃそうだ。

メガネを額まで上げる行動をしているのに、“まだ自分はコンタクトをしている”と思い込んでいるやつは相当ヤバイ。

 

往年の漫才師、横山やすしさんの「メガネ、メガネ・・・」のネタよりも、更に上を行ってしまった自分の行動に、すこぶるがっかりしたのであった。

 

(不測の事態により、今回は内容を変更してお送りしております。次回、怒涛の宮古島編へ。)