とある日常 2
この職に就いていると、投薬時の患者様とのやり取りの中で、いろいろなエピソードを持っている方も多いだろう。
ある調剤薬局で80歳台のおばあちゃんに投薬していた時の話し。
ふと、
「あんたの腕、毛深いねー、カッカッカッ。」
と、水戸の黄門様のような笑い声とともに指摘された。
私は自他ともに認める“毛深い人”である。特に腕毛が多く、毛が絡まるので腕時計すらもしないタイプの人である。
よって、毛深いネタは今までも多数あるわけで、この年齢になるとよいネタにもなり、返しも上手くなっていた。これで話が弾むのであればドンと来いである。
おばあちゃんから、立て続けに突っ込まれる。
「こんなに毛が生えているひと生まれて初めて見たわー、カッカッカッ。」
(・・・ちょ、ちょっと待ってよおばあちゃん。80年以上生きてきて、私があなたの人生の“トップオブ毛深い人”ではないでしょうよ。さすがにそこまでではないと思うんだけど・・・)
間髪入れず、更に重ねて突っ込まれる。
「おじいさんにはこんなに生えていなくてホント良かったよー、カッカッカッ。」
(・・・・・・そこまでっ!?)
黄門様の笑い声の余韻が響き渡る。
私の中で“一件落着”することはなく、今までで一瞬でも『脱毛』を考えたのは、この時以外にはない。